受験に限らず、勝負事など色々な場面で『ゲン担ぎ』をしていると思います。
ニッポン放送、「SUZUKIハッピーモーニング・いってらっしゃいシリーズ」で紹介されていた、
「心理的な安心感をもたらすもの」、『ゲン担ぎ』についてです。
ゲン担ぎとは
『ゲン担ぎ』とは、『良い結果になることを願う行動』のことです。
この『ゲン担ぎ』の『ゲン』ですが、仏教用語で“仏教の修行を積んだ後に得られる効果や効き目”のことです。
漢字で“体験”や“経験”の『験』と書きます。
このように“仏教の修行を積んだ後に得られるもの”なので、とても縁起が良いということで、
この『験』という言葉は『縁起』という意味でも使われるようになりました。
そして“縁起を担ぐ”が、ゲン担ぎの語源といわれています。
そうなると“縁起”が“ゲン”になった理由ですが、
これは江戸時代に庶民の間で流行した、『逆さ言葉』によるものと考えられています。
逆さ言葉とは“言葉あそび”の一種で、『倒語(とうご)』ともいいます。
例えば、『話のネタ』という言葉がありますが、『ネタ』とは『種(たね)』の『逆さ言葉』だそうです。
そして『ゲン担ぎ』という言葉も、この逆さ言葉から生まれたものといわれています。
『縁起』が『ぎえん』になって、さらに『ぎえん』が『げん』に変化していって、
最終的に『ゲン担ぎ』になったのだそうです。
この逆さ言葉ですが、現代では『業界用語』とも呼ばれていて、
例えば『お寿司』のことを『シースー』、『銀座』のことを『ざぎん』、
『ハワイ』のことを『ワイハ』などと言うことがあります。
ゲン担ぎの豆知識①
これから本格的に受験シーズンを迎えますが、“受験のゲン担ぎに食べる物”というのが、いくつもあります。
例えば、定番なのが『トンカツ』や『カツ丼』。
“カツ(勝つ)”の語呂合わせで、“受験に勝つ”です。
『おむすび』。“努力が実を結ぶ”、“良い縁が結ばれる”という思いからです。
『納豆やオクラなどのネバネバの物』
“ネバネバ”を“Never give up!”に掛けたのと、“粘り強く合格をつかむ”という思いからです。
『ウインナー』。
発音が英語の『winner(ウイナー・勝利者)』に似ていることからです。
そして、受験シーズンに人気のお菓子が『ネスレ日本』さんの『キットカット』です。
この商品名が、“きっと勝つよ”を意味する九州の方言、『きっと勝つとぉ』と似ていることから、
1990年代後半から九州を中心に“受験生のお守り”として広まっていったそうです。
食べ物以外にも、『試験の時、五円玉を身につける』。
こちらは『五円』が『ご縁』につながるからです。
他にも、日頃の受験勉強の時、『机にタコのものを置いておく』。
『タコ』は英語で『octopus(オクトパス)』ですが、“置くとパスする・合格する”につながるそうです。
ゲン担ぎの豆知識②
日本では古くから、“言葉にも霊魂が宿っている”といわれています。
『言霊(ことだま)』という言葉があるように、“言葉には不思議な力がある”と信じられています。
その際、“縁起の良い言葉”を発すれば“良いこと”が、
逆に“不吉なことを連想させる言葉”、『忌(い)み言葉』を発すると、
“良くないこと・悪いこと”が起こるといわれています。
そのため、本来の言葉とは違う言葉を使っているケースが日常ではよく見られるそうなんですネ。
例えば、結婚式や宴会などが終わる際に使う言葉『お開き』。
これは“終わる”という言葉が『忌み言葉』なので、それに代わって
縁起が良い『開く』という言葉が使われるようになったそうです。
他にも“イカの内臓を取り除いて干したもの”のことを『スルメ』っていいますよネ。
ところが、この『する』という言葉が、“賭け事でお金を無くす”という意味の『する』や、
“財布やお金を盗む”という意味の『する』をイメージさせて“縁起が悪い”ということで、
ゲンを担いで別の呼び名が誕生しました。
それが『する』を縁起の良い『当たり』に変えた、『あたりめ』です。
同じように、ゴマなどの食材をすりつぶすことを『あたる』。
その際に使う『すり鉢』も、『当たり鉢』と呼ぶようになったそうです。
ゲン担ぎの豆知識③
『ゲン担ぎ』と似たような意味で使われている言葉に『おまじない』があります。
でもこの2つは違うもので、『ゲン担ぎ』が“良い物事との縁を起こすための日々の行動”であるのに対して、
『おまじない』は“神様や仏様のお力を頼ること”です。
ゲン担ぎの場合、過去の経験から、“この行動をすれば良い結果が出る!”と信じる気持ちが根底にあります。
それに対して、おまじないは“願掛け”です。
このように、ゲン担ぎとおまじないでは、“行動”と“念ずる”の違いがあるそうです。
他にも似たような意味で使われる言葉に、『ルーティン』があります。
『ルーティーン』、『ルーチン』ともいいます。
『決まっている手順』ですとか、『お決まりの所作』、『日課』といった意味があります。
ゲン担ぎとルーティンは、“同じ行動をくり返す”という点では共通していても、
まったく違うものなんだそうですネ。
ゲン担ぎの場合、“過去の経験”に基づいたものです。
そのため時には同じことをやっても、同じ結果が出ないことがあります。
それに対してルーティンは、同じことをくり返すことで、
体調や心の変化に気づいて、修正することができます。
それによって、常に安定した結果を導くことができるそうです。