2023年度の中学入試が終わりました。
最近の中学入試では、知識と思考力を組み合わせて解くと言われる思考力問題が増えてきています。
保護者の方はお子さんがこれを解く力を身につけておかなければと思うけれど、「思考力」ってどんな力なんだろう、うちの子にはどう対策させればいいんだろう、と悩まれてはいませんか?
2023年度の全国の主要難関中学の入試問題を解いてみて感じたことを書いてみます。
算数の対策のこれまでの定番は?
出題される解法パターンを学習し、練習する!
思考力を問う問題では、以下の2点が求められます。
- 学んだ解法パターンをいくつも組み合わせて解いたり
- 与えられたたくさんの情報を取捨選択し、整理して考えること
そもそも「算数の思考力」って何?
「思考力」は読んで字のごとく「思考する力」です。
入試で問われているのは「論理的に考える力」。
すなわち「根拠」を筋道立てて「結論」を導き出す力です。
入試での「根拠」は問題に示されている情報とそれに関係する知識で、「結論」は、解答すべきことになります。
思考力問題を解くポイントは、問題の中から必要な情報を見つけ出し、知識と組み合わせること。
これまでもこのポイントは求められていましたが、世の中の変化により知識を知っている知っていないではなく、どうその知識を使いこなせるかに論点が変わってきています。
また、TOEICが対策本であふれてどんどん出題方法を変えているように、塾が入試問題を研究し、対策をするようになると学校側もより入試問題を複雑にしないと差がつかないという事情もあります。
「問題に示されている情報を見つけるところに一手間かかる」
解答に必要な情報を見つけるには、
「問題を読み解く力=読解力」が必要になります。
私は、「算数語への変換」と呼んでいます。
算数では国語と違って見つける情報が「必ず知識とつながる」ことがポイントです。
基礎・基本をしっかり身に付けることが大前提!
算数の「知識」とは、計算のきまりや法則、定理といった、基礎・基本の事項になります。
これがしっかりと身に付いて初めて、「問題に示されている情報を見つける」ことができます。
問題例を通して考えてみましょう。
ある200以下の整数【ア】は、以下の条件を満たしています。
(条件1)【ア】を5で割ったあまりは、【ア】を3で割ったあまりの2倍である。
(条件2)【ア】を19で割ったあまりは、【ア】を5で割ったあまりの2倍である。
このとき、整数【ア】を求めてください。
この問題を「算数語」に変換するとこんな問題に読み替えることになります。
ある200以下の整数【ア】は以下の条件のどちらかを満たしています。
(条件1)【ア】を5でわると2あまり、3でわると1あまり、19でわると4あまる
(条件2)【ア】は5でわると4あまり、3でわると2あまり、19でわると8あまる
このとき、整数【ア】を求めてください。
ここまで問題の条件を具体化すると小4,5年生レベルの問題になってしまいます。
「5でわったあまり」→「あまりは1~4までに絞られる」
「あまり」という言葉をみたら、「あまり」は「割る数」よりも小さくなるということは習っています。これを条件に置き換えればいいと見抜ける力です。
文章題では「読み替え」
また、問題の条件から3で割ったのあまりが1,2の場合が考えられるから5で割ったあまりは2か4と考えられることに気づいて2つの場合分けを考えます。そこに19で割った場合の条件をくっつけるのです。
実際の問題では、いろいろな情報が隠されていたり、つけ加えられたり、表現が変わったりしているので、それを見つけられるようにするためにも、基礎・基本をしっかり身に付けることが大前提です。
条件の数字に意味を見出す
この問題では読みかえた(条件1)(条件2)ともに3つの条件があるのでそれを満たす数を探すには書き出しが必要そうですが、ちょっと待ってください。よく条件を見ましょう。
(条件2)では3や5で割ったあまりはともに割る数より1少ないので3と5の公倍数15より1少ない数とわかります。つまり14、29、44、・・・。そして19でわって8あまる数は27、46、65、となるので下1桁が4か9になるのは84と179とわかります。179が(条件2)を満たすことがわかるので答えの候補だと分かります。
(条件1)ではあまりの関係がばらばらなので3と5の条件から最小で満たすのは7で以降、7,22,37と15ずつ増えます。これが19の条件とあてはまるか考えた時に、7,22,37,52,67をそれぞれ19で割ったあまりは7,3,18,14,10,6,2,17,13,9,5,1,16,12,8と4ずつ減っていきやっと8が表れます。その時は、7+15×14=217なので条件を満たさない。
したがって答えは179とわかります。
どうですか。
書き出すにしてもあまりの規則性から分類をすることで計算を極力回避しつつ答えを出すようにしています。この考え方も実は塾で習っているのですが、知識と使い方がつながっていないだけなのです。
情報を見つけることと筋道を立てるには「関係づけ」が大切!
条件を「算数語」へ変換できたならば問題を解く際の重要なポイントは、「関係づける」ことです。
上記の例のようにあまりと規則性をつなげることのように。
基礎・基本は、バラバラに身に付けるのではなく、AならばB、BならばCと「関係づける」
算数だけに関わらずですが、物事はいろいろとつながっています。
これらを、バラバラに覚えただけでは、「問題から情報を見つけること」、さらに「結論」への「筋道を立てること」は難しくなってしまいます。基礎・基本の知識を「関係づける」ことで、この2つの作業のハードルがぐっと下がります。
ハードルが下がることで、「問題に示されている情報を見つけるところに一手間かかる」の「一手間」が易しくなっていくのです。
では、どのようにすれば、上手に「関係づける」ことができるようになるのでしょう。
1つは、基礎・基本の知識を「まとめる」ことです。
例えば、
「正三角形の性質ときたら〇〇、△△、□□・・・」
と1つのキーワードに関連する知識をつなげて、まとめてみることです。
皆さんは、正三角形と言われたらどれだけのキーワードが出てきますか?
- 三辺が等しい
- すべての角が60°
- 頂角から垂線を下すと底辺を二等分し、2:1の辺の比になる
- 重心は垂線を2:1にわける
- 正三角形は円に外接、内接する
- 正六角形の中に正三角形がたくさん存在する
等々
このとき、「〇〇ときたら△△」のように「逆向き」についても確認していくと、さらによいでしょう。
これを積み重ねていくと、どんどん知識が整理・整頓されて、「関係が見えてくる」ようになり「関係づける」力がついてきます。
最近気になる算数問題集
中学入試 知識だけでは解けない思考力問題集 [ 旺文社 ]
以前本屋で見かけて最近気になっている問題集があります。
この問題集で言っていることが私がこのブログで書いていることと同じなのかどうか?
中学入試 知識だけでは解けない思考力問題集 算数 [ 旺文社 ] 価格:1,760円 |
こちらについては、購入したらまた感想等を書いてみようと思います。
思考力で合格! 公立中高一貫校 適性検査対策問題集 算数的分野
実は、息子が中学受験をしたいと言い出した時に、過去問を買って公立中高一貫校も検討しました(学費が安いので)。算数は私立のようないわゆる〇〇算とかはなく、丁寧に読み進めば解けるようになっていますが、作文もあるし息子には対応は難しいなと思い私立に絞りました。
公立中高一貫校の問題は学習指導要領の域は出せない制約の中で、色々と工夫された問題があります。
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さいごに
結局のところ、行きつく先はやはり基礎・基本の徹底です。
これなくして、「算数語への変換」はできないはずです。
だから算数の成績が伸びないと思っているお子さんは、基礎がまだまだしっかり身についていないか、問題の解き方を覚える勉強となって基礎の運用力が身についていないかのどちらかではないでしょうか?
https://laughwaku.com/chugakujilyuken_sansu/